the happening to meet - played by Destiny -
運命の出会い
Written by 野口@ウェストマー大学(No.0000000006)
それはまだ私が、この学校の伝説を知らなかった頃の話。
"小指には見えない赤い糸が結ばれていて、何時か巡り会う運命の人と繋がっている。
そして…。"
幼い頃、誰から聞いたのはもう覚えていないけれど、
赤い糸の伝説は、いまでも私の心の中に深く根付いている。
記憶の奥底にしまってしまうには、あまりにも鮮明で、
そして素敵な伝説だったから…。
でも…。
「今日も、見つからなかったな…。」
私は心の中でそう呟きながら、小さくため息をついた。
これは他の誰にも教えた事はないのだけれど、私は昔から、そう、あの赤い糸の
伝説を耳にした時から、心のどこかで運命の人を探すようになってしまった。
あの日以来、私は自分では多くの人に出会ったと思うけれども、その誰にもまだ
運命を感じていない。そして、それはこの学校に入ってからも続いている。
もちろん、決してこの学校にある男の子が悪いからと言うわけではない。
確かに格好良い男の子や素敵な男の子だったら、この学校にもたくさんいると思う。
他の子達が憧れて、密かに狙っている伊集院君も素敵だなとは思う。
"理事長の孫だし、なんて言ったって財閥の一人息子、跡取りだもの。玉の輿よね〜"
とクラスの皆は言っている。でも…
でも私は彼に全く運命は感じない。
「やはりあの伝説は伝説でしか無いのかな?」
私は、そんな事を考えながら校門に向かって歩いていた。
校庭からは、サッカー部や野球部の生徒が一生懸命練習しているのが判る。
校舎からは、吹奏楽部が練習している音が聞こえる。
私の部活−文芸部なのだけど−は、既に打ち合わせが終わってしまった。
部のみんなは、それぞれ図書館に本を読みに行ったり、何かを食べに行ったりとして
部室に残っている人はもう誰もいない。
私も先輩に誘われたけれど、教室に忘れ物をしていて、先輩方を待たせるのは
悪いと思ったので、悪いけれどお断りさせて貰った。
それに…運命の相手について少し考えたかったのもあったから…
「それとも…運命なんて、小説と同じただの虚像なのかな?」
あまり考えたくないけれど、最近よく考えてしまう事をふと、思ってしまった。
私は急いでその考えを打ち消すように強く首を振る。
その時、どこかから
「すみませーん」
と誰かが私を呼び止める?声が聞こえてきた。
私は声がした方に振り向いてみると、左手に黄色い物が詰まったバケツを
下げた生徒が、私の方に手を振っている。
「すみませーん。それ、取ってください」
その人はそう言って、私の手前辺りを指差した後にバケツを置き、
私の方へと走ってくる。
「それ?」
私はその人が指を指した辺りを見てみた。
あまりにも考えに夢中になっていたせいか、気が付かなかったけど、
小さな黄色い球体が、私の足元へかすかに弾みながら転がってきていた。
私は慌ててそれ−テニスボール−を拾い、走ってやってくるその人に手渡そうとした。
私は間近でその人の姿を見た瞬間、そのときになって初めて、いままで私が求めていた
運命の相手が誰であるのかを理解できたような気がした。
頭の中に断片的にではあるけれど、ある情景が浮かんできたのだ。
少し肌寒くそよ風が吹くさわやかな天気の中、どこかにある大きな樹の下で
私はこの人を待っている。告白する為に…。
もしかしたら来ないのではないかという不安と、きっと来てくれるという確信を
同時に持ちながら…
そしてこの人が、彼が樹の側へと急いで走ってやってくる。息を切らしながら…
「は…はい。どうぞ」
私は顔が赤くなり、口がどもるのを隠すように顔をふせながら、
その人にテニスボールを手渡した。
その人は、
「どうもありがとう」
と軽く言った後に急いで、バケツを置いた場所まで戻り始めた。
「あ、あの…」
私はつい、その人の名前を聞こうと呼び止めてしまった。でも考えてみたら、
ここで名前を聞くのも何か変だという事に気が付いた。
その人は不思議そうな顔をして私を見ている。
「い、いえ。何でもない…の。部活、頑張ってね。」
私はその人の顔を見ていたらそうとしか言えなかった。
「ありがとう」
彼は短く、でも嬉しそうに答え、ボールが入ったバケツを手に、テニスコートへと
戻っていった。
私はその彼の後ろ姿を見えなくなるまで黙って見送った。
ほんの一刻の瞬間だったけれど、私はこの瞬間を決して忘れないと思う。
私はその時、確かに私の見えない赤い糸を見たのだ。
そしていつか…
コメント;
この話は私がイメージする見晴ちゃんが主人公を見染める?シーンです。
私の中では、この出会いをきっかけにして、みはりんは主人公に走る?事に
なります。文章力の無さから"不思議な運命の出会い"を強調しきれなかった
点が心残りです。
言い訳;
ショート作品(それ以前に小説そのもの)を書くのは始めてだったりします。
あくまでも私のイメージを文章にしただけなので、主人公の部活が違うぞとか、性格が〜うんぬんかんぬん〜の指摘は勘弁してください。実は私は、ラジオ
ドラマを一度も聴いた事が無く、CDも一枚も持っていません。のでドラマの
みはりんを全く知りません。全てゲーム上のもしくは私のイメージ上からの
産物ですのでご了承を。
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