「常夏の幸福」・旅とイベントと菊池志穂(1998年版)

文責:コアラのリボンにひとめぼれ!


0.はじめに…いっしょがいいな

「蝉が鳴く頃までにはできます」確かに菊池志穂はそう言ったはずだ.しかし私が 「いっしょがいいな」を手にしたのは,梅雨は開けていないものの夏まっ盛りの 7月23日だった.私は浜松市の家電量販店でそのCDを購入する.

それが,今年の暑い夏の始まりだった.一枚のアルバムとひとりの声優が, この夏をこんなに暑いものにするなどとは,誰が予想しえたであろうか?

否,予想できた人物はいた.そしてその者は今,イベントレポートを書い ている.

1.土曜日の肩もみ

7月25日,土曜日.天気曇ときどき雨.関東の梅雨はまだ明けない.

小雨そぼ降る中,渋谷にあるNHKスタジオパーク内のスタジオに行く. ラジオの公開生放送を毎週土曜日にやっているのだ.この日はゲストに 歌手/俳優の高橋由美子さんも来るということもあり,会場は内外ともに 盛況であった.

ウーファン(伍芳)さんと太川氏との爆笑トーク(ないしは口説き勝負)や 来瞳ちゃんのくるくる日記,一般募集 10分間 DJ の「頭にこびり付く名曲選」 などおもしろいネタはたくさんあったのだがひとまず話を進める.

拍手とともに志穂ちゃん登場.以前にも登場したことがあるので雰囲気は 良く分かっている様子.早速アルバムの話になる.「ひまわり」を聞いた後, 太川氏に「可愛い恋愛だねぇ」と突っ込まれる.前回の登場で肩もみの話が出 ていたらしく,「私肩もみ上手なんですよぉ」と,太川老の肩を本番中にもみ だすシーンあり.ラジオでは見えないのにいいんだろうか…(笑).

アルバム発売イベントの話をする.じつはイベント会場を良く分かってい ない志穂ちゃんがあやふやに太川氏に内容と場所を告げる.

太川
「今後のイベントは,7月26日に埼玉春日部,8月2日仙台,3日に 福島…」
会場
(親指人差指を回して「逆,逆!」のリアクション)
太川
「え? 逆なの? 志穂ちゃ〜ん,自分のイベント覚えてないんか?(笑)」
志穂
「だって私よりファンの方が詳しいんだもん」(一同爆笑)

ほんの短い時間であったが,志穂ちゃんらしいトークは健在であった.そ の後もペンネーム問題や怪しい鬚面男のエピソード等があるのだが,これらに ついてはまた別の機会にしたいと思う.ただひとことだけ言えるのは,志穂ちゃ んのファンは恐いと思っている川端由佳さん,それは誤解であり,単なるオー バーアクションだということだけはわかって欲しい.恐がらせて申し訳ない.

会場を出ると雨.私は松本梨香さんの言いつけ通り,タオルをかぶって渋 谷の街を後にした…

2.ひまわりと握力

7月26日,日曜日.天気は曇一時雨の降る難しい天気.前日お世話になった 南武線快速復活計画さんの家から何本かの電車に乗り継ぐ.

「自称」駅ビルロビンソンは駅から徒歩7分ぐらいの場所にある.最上フロ アに映画館とイベントスペースの用意されている,いわゆる百貨店である.会 場前で整理券を交換.ちょうど黄色の長袖を着ていた私は,ふと思い付いて文 具フロアへ.ひまわり(造花)を胸に飾ろうという計画である.エスカレーター を降りていると,何故かワンダーの袋を抱えたオーバーオールの女の子の姿が 見えたのでありゃっと思って見ていると志穂ちゃんだった.他者の話を総合す ると,どうやらスタッフ一同イベント会場がどこかわからず迷っていたらしい. ちなみにイベントを主宰したCDショップは1フロア下の階であった.

だから,女の子に見えたんだってば.

さてさて,イベント開始.ワンダーかの〜ちゃんこと加納氏のギャグあり の前説の後,志穂ちゃん登場.すぐに下がらせてもらえないかの〜ちゃん,こ の日は受難.この後かの〜ちゃんの前説がエスカレートして来るのだがそれは 後日談.

チャリンコでやって来れる幸せな地元人に羨望の眼差しを向けつつ,アル バムの話.元々のタイトルは「こころの葉っぱ」だったとか.アルバムの曲の 順序も自力で考えたり,「この曲タイトル嫌」と曲のタイトルを変えたりと, 自分のアルバムに自分を表現しようと頑張っている志穂ちゃんの様子が伝わっ てくる.でもまだ赤ペン先生康珍化さんにはかなわないらしい.

質問コーナーで桃好きなのを「去年始めて気付いた」と語り,過去の芸歴 から消したいと思っているものがあったり,「菊池の花はひまわりです,菊池 の色は黄色かな? 菊池の木は桜で,菊池の動物はサル」というような菊池のト レードマークも決定(?).いつも通りイベントは進んでいった.

質問コーナーも終り,なんかいつもより展開が速いなと思っていると後説 にかの〜ちゃん再登場.

「ここでスペシャル・た〜いむっ

どよめく会場.かの〜ちゃんが突然放った最後の言葉は,志穂ちゃんとの 握手会だった.『声優菊池のしないもの,サイン書くのと握手会』と誰かが言っ たかどうかは定かではないが,志穂ちゃんと握手会は無縁の存在だと思ってい た我々にとってこのイベントはびっくり仰天の展開を迎えた.

もちろん話す事など用意しているはずもなく,前の方に座っていた私の順 番はすぐにやってきた.舞い上がる私に志穂ちゃんから声がかかった(と思う. 何分舞い上がっていたので正しい記憶がない).

志穂
「いつも来てくれてありがとうね〜」
「これからも行きますよ〜(^^;)」
志穂
「たまには彼女もつれて来てあげてね〜」
(答えもなくその場に崩れ落ちる私^^;;;)

ドキドキもののイベントも終り,感動冷めやらぬ中私は PHS を鳴らす. 言葉はこうである.「あ,9日空いてる? 空きそう? 空けといて.詳しくは帰っ てから話すわ」

感動冷めやらぬまま飲みに行き,実は同日に金月真美さんのコンサートが あったことを飲み屋の隣のグループ(コンサート帰りだったらしい)に教えても らい一緒に楽しい夜を過ごした.もちろん帰りは大垣夜行ではあったが.

3.アキハバラ巡り大計画

8月1日,小雨.朝早くから快速ムーンライトながらで上京した私は,はっ きり言って,暇を持て余していた.東京駅に着くのは午前5時前.この日のメ インイベントである声優コレクションまでには馬鹿ほど時間がある.とりあえ ず小田原まで往復して睡眠をとった私は,思い立ったように中央線に乗った. 目指すのは西武鉄道花小金井駅.

アキハバラ電脳組という濃いアニメ番組はご存知だろうか.そのアニメの 登場人物の名字は全部東京近郊の駅名なのである.私は暇に任せ,主人公たち の名字の駅を次々と回ったのである.

中央線国分寺から西武鉄道花小金井駅.写真をとった後,そのまま西武新 宿へ.新宿駅で京王線に乗り換え,京王桜上水駅へ.降りて写真をとって,折 り返して新宿に戻り,山手線を田端まで.田端から京浜東北線で東十条へ行き, そこから折り返して品川で降り,京急で泉岳寺へ.そこで私ははたと困ってし まった.「大鳥居駅ってどこにあんねん?」時間は既に昼をまわっていた.

4.渋谷区立菊池幼稚園

8月1日,土曜日.小雨が降ったりやんだりの中途半端な天気である. 大鳥居駅を巡るのを断念した私は,ちょうどそのときかかってきた電話をうけ, 渋谷へ向かった.

この日のミスタードーナツのプレミアムはゴジラグッズであった.早速 周囲の友人たちと32ポイントを収集し,ひと揃いゲット.私達はこうして 志穂ちゃんの楽しみを一つ減らしている(笑).そうこうするうちに会場時間も 近付き,わらわらと整列を開始する,と前の方から私を呼ぶ声.

呼ばれて行くと何やらけっこう美人系のおねいさんが二人ばかり列の先頭 と話をしている.どうやら取材らしい.で,しゃべる事にかけては負けないと 変な自負をしている大阪人テーブルトークゲーマーは,早速インタビューで色々 と喋りまくった.その様子はもしかすると,この秋ごろに見られる…かもしれ ない.

そうこうするうちに声優コレクションが始まる.2時間にわたりその声優の 世界を表現するという,結構行き当たりばったりのショウでもある.麻績村ま ゆ子ちゃんの情報量ゼロの「私と志穂ちゃんのこれまで」に爆笑しつつ,まず は「Dream Child」でスタート.

歌手の芸歴を紹介した後,突然始まる折り紙コーナー.いきなり配られる 千代紙に驚く我々を物ともせず「今日は何折ろっか〜」と選んでいる志穂ちゃ ん.セミを折り始める.折り始めると真剣になる会場も結構可愛い.

続いて始まるおゆうぎの時間…もとい,ラジオ体操第一.「はーいみんな 立って〜」から始まる突然のラジオ体操.隣近所を殴ることしばしば.今度は ぜひ狭い会場ではなく広い場所でやりたいところである.体力の衰えに気付く 私は第二の方が好きだったりする.

さらに続くは紙芝居の時間.見せられないのが残念.じゃじゃーん.お歌 の時間はみんなで「恋シミュ」の大合唱.歌もコールも会場だけ…寂しい.衣 装変えの後,一人寸劇.すごく上手だった…とまではいかないものの,ぜひま たの機会にも見られればいいなと思わせる名演技だった.それから最後にミニ ライブ.

本邦初公開の「バス停に立って」と「ひまわり」,そして志穂ちゃんのメ ガヒット曲「丘の上に行こう」.難産だった曲だけに良くできた曲になった喜 びもひとしおなのかもしれない.ノリのいい曲に会場も盛り上がる.そして, あっと言う間の2時間は終宴となった.ライブあり寸劇ありいつものトークあ りの菊池幼稚園は盛況であった.

あー,そういえばアイドル声優キクチシホ計画というのもあったが…ありゃ 頓座するな.絶対.

5.園児の酒宴

その後 30 名近い不良園児たちは渋谷近所の飲み屋にて酒を酌み交わす. 私の同級生に昔話を暴露されかけたり,仕事を忘れて一般客モードに移行した 某氏など,いつもどおりの大騒ぎな宴席となってしまった.普段あまり見ない 顔もちょくちょく混じり,おおむねいい雰囲気で酒が飲めた気がする.ただし 隣のテーブルは「モーニング娘.」の歌で盛り上がっているという変な状態だっ たような気もするが,忘れたことにしておこう.

6.梅雨前線を追いかけて

8月2日,土曜日.旅のはじまりの朝.まだ日は昇ったばかり.

朝5時起床.お世話になった先輩の家から車にて出発.7時,東北自動車道 蓮田SAに面々は集結.予想通り天気は小雨がぱらつき,これからの旅の苦難を 物語りはじめる.不安にさいなまれながら3台の車・精鋭11名が出発した.

雨は予想通り強くなって来る.「雨女〜っ金返せ〜っ」と叫びながら車は 平均時速120km弱で混雑の無い東北道を北へとひた走った.車の中では「いっ しょがいいな」がかかっているのかとおもいきや,「おしゃべりしんこきゅう ・くま」や「E・TUDE」,「Be Myself(丹下桜)」果ては森下純菜のナンバーま でかかるという,なんだか良く分からない集団になっていたのは内緒である.

後発の車組と電車組も合流し,いったいここはどこ? という郡山駅で記念 撮影をして,丸井の最上階のおいしいピザでピザを食べ,くだもの屋に並んで いた桃を仙台への土産に,と抱えつつイベント会場へ向かうこととなった.

7.転入生

8月2日午後1時,三野屋郡山店.外はいまにも泣きだしそうな天気.店の売場から 陳列棚を移動させ,なんとか50人ぐらいが入る場所を作る.マイク設備は古い カラオケセットのようなもので,かなりレトロな雰囲気がいい設備だった.

前説のかの〜ちゃん登場.先生は君達に一言いいたいことがある.それは 「闘魂」である.この言葉を大事にして欲しい.しかしかの〜ちゃんには金八 先生は似合わなかったらしい.マイナス50点.めげない先生は転入生の女の子 を紹介する.ということで志穂ちゃん登場.

志穂ちゃんはプライベートで福島へ遊びに来たことがあるらしく,今回の 旅もけっこう楽しみにしていたようである.ファンの方はというと,志穂ちゃ ん似合うのが初めてと言うひとも多かったようで,けっこう静か.志穂ちゃん 曰く,「恐いもの見るような目で見ないでよぉ〜(笑)」とはご謙遜を…どうい う意味だ.

雨が恨めしかったのは遠征組である.申し合わせたわけでは決してないの に,なんと遠征組5名が「雨」ネタを質問コーナーで投げつけていたのである. 一人一人書き方は違ったものの,相当怨んでいるらしい(笑).志穂ちゃん本人 もどうやら自分が雨女であることを自覚したらしく,プロモビデオや初仕事, ジャケット撮影の時に雨が降った話をしてくれた.一時期鳴りを潜めてはいた ものの,雨女は健在である.

そんな雰囲気で時は流れ,先生の計らいで仲良くなるための握手会開催. 次の会場へ行く我々に「気を付けてね,また3時間後ね」とにこやかに送り返 してくれた志穂ちゃんであった.

何故か店の前のゲームセンターにあったポスタープライズマシンにやたら はまっている友人を引立て,我々は次の目的地へと急いだ.猪苗代湖の上には 不穏な雲がたれこめていた….

8.転校

8月2日.天気曇.

磐越道は視界最悪.普段なら綺麗だと思われる猪苗代湖もガスに阻まれて しまいちょっと残念.車組はひとまず磐梯山SAにてブリーフィング.ついでに この夏から新しく艦長になったあの娘と一緒に記念撮影.特別に私はツーショッ トの恩恵に預りつつ,馬鹿はそれぐらいにして一路会津へ.

町中は駐車場に恵まれず多少うろうろするも,なんとか車をいれて目的地 を探す.あるのは街頭観光地図と住所だけ.こりゃ大変そうだな…と思ってい たら意外にすぐに発見.店頭にも「来る!」と言わんばかりの看板が出ていて 雰囲気を醸し出していた.地元の方々を優先したいという店側の意向を酌み, 我々は可能な限り最後尾からの入場となる.

サトウの店の人による前前説につづいてかの〜ちゃん先生登場.先生が 言いたかったのは「闘魂」ではなく,「合コン」だったそうな.確かに 好きそうな気がする.志穂ちゃん曰く,ワンダーは合コン好きだとか.3時間前に 転入して来たお友達はもう仙台へと転校してしまうらしい.惜しまれながら転 校して行くお友達を紹介ということで志穂ちゃん登場.

ネタ切れ気味のかの〜ちゃんをよそに福島が初めてじゃない志穂ちゃんは 軽快にトークを飛ばす.湯本温泉と言えば会津若松の近くである.奮発して一 泊2万円の宿に泊まったそうな.値段は高いだけあって料理は本当に豪勢だっ たそうだが,我々には手も足もでない…気がする.こんなことをしてなければ十 分手も足も届くのだが,それは言わない約束にする.

トーク握手会ともつつがなく終了.前説かの〜ちゃんを採点した志穂ちゃ んの談によると,さっきの郡山ではマイナス50点で,今回は10点をキープ.で も確かこれ100点満点の評価だったような気がする.あまりに可哀想なので, 一応関西人の私がなんとかフォローできないかと簡単なアイデアを質問コーナー のアンケートついでに送る.移動時間が短くあんまりいいアイデアではなかっ たが…

スタッフの中にまで混ざっていたファンとの交流の後,我々は一路仙台へ… 向かわなかった.

9.ラーメンと合宿

8月2日午後7時.車は高速道路ではなく,一般道を走っていた.

降るのか降らないのか微妙な天気のもと,帰宅組とわかれて我々が車を走 らせたのは仙台ではなく,喜多方であった.せっかく喜多方のそばまで来たの にラーメン食わないのはもったいない.片道30分ほどで喜多方に到着.喜多方 はどうやら祭のようであった.

店舗より厨房の方が面積が広いように見える店で手打ちのめんを堪能した のち,お土産を幾つかしつらえて今日の宿へ向かう.地元が仙台の友人の実家 へお世話になるために,である.再び磐越道から東北道に乗る頃には,もう夜 を迎えていた.そしてたどり着いた仙台は,夜景に包まれた百万都市であった.

地元の友人に先導されて車は友人の実家へ…と,これがひとめ見て,空い た口が塞がらないような状況.なにせ,でかい.豪勢とか高級なんて レベルではなく,でかいのだ.車が5台入ってもまだ余裕のある庭に車 を回し,ご厄介になる総勢11名であった.ちなみにどれくらい大きいかと言う と,住居だけで2階に7部屋,1階にやたら広いLDKと事務所+2部屋,当然2階に もトイレはあるし,敷地内には雇用人の寮まであるのだ.お手伝いさんらしき 女性もいるし,とにかくびっくりである.

2階の2部屋をお借りし,多量のビールとおつまみとお土産を持ち込んで, 旅行の清算や飲み会.眠さに脱落する者もでつつ,夜中まで談笑はつづき,ま るで合宿であった.談笑の内容は…秘密(笑).久しぶりに楽しい一夜はすぐに 更けて行く…

8月3日.晴れ.

朝イチでお風呂をお借りし,朝食までご用意していただいた(12人分!)ご親 切なご家族方に感謝の気持ちいっぱいで友人の実家を後にした我々は,さっき 食ったばかりにもかかわらず,牛タン屋へと出撃.仙台に来て牛タンを食わな いのは,喜多方までラーメンを食いにいった我々のことを考えると,嘘である. さっそく,やや裏通りを狙って適当に選んだ店へ入る.

ただでさえ腹いっぱいのところであったのに,うまい(かつ,分厚い)牛タ ンをすっかり平らげ,我々は仙台のイベント会場へ向かった.

10.さる刑事捜査会議

8月3日,17時.午前中までの晴天は曇空になっていた.

イベント会場は,予想以上に人が入った.事前情報で「仙台はかなり少な いんじゃないかな…」という話もあったのだが,そんな雰囲気は微塵も感じら れないほどに,かの〜ちゃん登場.

今日のかの〜ちゃんは,ハードボイルドに決めた刑事長(デカちょう)役に て登場.仙台のレンタルビデオショップで起こった殺人事件に関する操作会議 らしい.犯人は石川某という全身ベルサーチの男だとか.そんなこと言ってか の〜ちゃんの首は大丈夫なのだろうか.石川某は大阪方面へ逃走中とのことで あった.ちなみにベルサーチ石川氏は「いっしょがいいな」のセールスプロモー ターである.

さて,今回の難事件に関して本部から敏腕「さる刑事」菊池志穂登場.さっ そく一曲,「丘の上に行こう」をサービス.きちんとした舞台があるのに歌わ ないのはもったいないよね…ということで他の会場ではなかったファンサービ スを展開することとなった.

仙台へ来たのも初めてではないということ.以前は山野さと子さんのセー ラームーンのイベントで,なんとヴィーナスの衣装を着て踊っていた…そうで ある.その頃は水木一郎先生門下生だった志穂ちゃん,小西寛子ちゃんと一緒 に水木先生と縁の深い山野さんのイベントに駆り出された…ようである.その 頃の様子を記録するものは今だ見つかっていない.

仙台について志穂ちゃんたちのやったことはかなり恐かった.突然「かつ おのたたきが食べたくなった」というひとことでいきなりホテル隣の日本料理 屋に無理を言って出してもらったり,仙台へ来ておきながら観光ではなくボー リング場で時間をつぶしていたりしたらしい.ちなみに腕は…まあ女の子だか ら,ということで(笑).とはいいながらもきっちり牛タンだけは食べていたよ うで,「東京の牛タンなんか向こうが透けて見えるよ〜」と言っていた.その 件は納得.大阪でもかなり薄い.

コミケで出す本の宣伝.それ以外にも「ここのスペース回りた〜い」と言っ ていたような気がするが,どこかは内緒.でもあのサイズで500円はちょっと 横暴な気がする.同人誌なんぞ儲けのためにやるモノではないので,ぜひ価格 帯の調整をしてもらえるといいなと思う.冊数限定はまあ,もはや仕方ないの だが.

雨女キクチは自覚があるらしく,「今日は晴れましたね」という質問に対 し,「朝方降ってたでしょ?」と自爆するのは見事であった.そうこうするう ちに,盛り上がりを見せたイベントは終了.

握手会ではすでに人気者のかの〜ちゃんとも握手ができ,みんな握手をし ていた.私も例外ではないのだが,握手のときにかの〜ちゃんは私のコメント を読んでくれていたらしく,ちらっとしか見られない状態だったことを謝って 下さったが,私としては読んでもらえてるだけでも幸せである.書いた甲斐が あるというものである.握手会もつつがなく終わり,「気をつけて帰ってね」 の言葉を胸に,我々は東北をあとにすることとなった….

帰宅途中は雨が降ったり地震が起きたりと,まるで我々の行く手を阻むか のようであったが,東北道はさしたる渋滞もなく,なんとか列車の発車時刻に は間に合った.東京発ムーンライトながらの最後の発券を手に,帰路についた. つかの間の休息と,次の旅のために.

11.夏祭り(前夜)

8月7日,午後9時.京都は蒸し暑い夜を迎えていた.その列車は,自由席の 混雑が200%近くになるというので有名な臨時快速,ムーンライト九州である. 私が駅についた午後8時30分には既にホームに人の群れが延び,座席確保はお ろか,はたして乗車できるのかどうかさえ微妙な状況だと思われた.

シュプール号でも使われる付随車を使用する自由席車両には荷物置場があ る.その荷物置場には,人が置かれている状態であった.私も座る場所を確保 しつつ,荷物置場の床を睡眠場所に狙っていたのだが,三宮で乗り込んで来た 女の子二人と母親,という一行にその場を譲る.小さい子どもにこの車両の環 境はあまりに苛酷すぎる…と思ったからである.

かくして,当然といえば当然ながら,私はほとんど眠ることさえできず, 硬い床に腰を下ろしての夜を過ごした…本当のことをいえば,座れただけでも まだ幸せな部類に入っていたのだが.さきの母娘のいる荷物置場の上の棚には, その母娘とは別の女の子とその友達と弟の3人が足をぶらぶらさせながら座っ ていた.

8月8日,朝.車内放送で目覚める人々.さきの母娘がくれたチーズブッセ を食べながら,我々は小倉駅でムーンライト九州をあとにする.母娘もその上 の階の姉弟も,博多まで乗るようだった.

大分は祭り一色であった.屋台といえば若草公園だけではなく,商店街の なかにまで広がり,子どもも大人もなにかと嬉しそう.うわついた雰囲気の中, 我々は来るステージに備え,何故か焼肉食い放題の店へと足を運んだのだった.

12.夏祭り

8月8日午後5時.天気快晴.かき氷についていたミニチュアの傘がいたく気 に入った私は,それを帽子に挿して,ステージの方を見ていた.ステージは既 にファンで埋まっている.私は既に席に座る気もなく,ビールをかっくらいな がらソーセージを食っていた.とそうこうするうちに夕闇が空を染め出し,ス テージのはじまりの時間となった.

アニメマインドと言えば,大分放送では相当メジャーなアニメ系ラジオ番 組のようで,かなりの気合いの入りが伺える.まずはラジオのスタッフやパー ソナリティ各位の歌が入り…評価はしないことにして…,新作映画の紹介の後, ゲストの登場となった.この日のゲストは大分放送(若草公園)と縁の深い菅原 祥子と野上ゆかな,そして菊池志穂である.

もっとも関連の薄い菊池志穂がまず登場.志穂ちゃんメガヒットの一曲 「丘の上に行こう」を熱唱.難しいリズムパターンのこの曲,志穂ちゃん本人 もリズムを外し気味であったように聞こえたが,会場は予想以上に整ったクラッ プを見せた.続いてインタビュー.舞台そでに走っていって館林見晴のセリフ を言うも,いきなりのことで思いっきり噛んでしまう.

この日はゲストが目白押しだったために,トークは短め.続いて2曲目の 「ひまわり」を歌う.夕闇迫る雰囲気に「ひまわり」の歌詞はよく似合う.手 にしていたひまわり(造花)を客席のサイリュームにあわせて左右に振る と,それに気付いた家族連れに「あ,あのおにいちゃん,ちゃんと歌に合わせ てひまわり持ってるね」てな顔をされ,何やら恥ずかしい雰囲気であった.私 のひまわりに気付いてこっちを向いた人はどれぐらいいたんだろう?

ステージは続いて野上ゆかなさんと菅原さっちゃんに場を譲る.舞台端で ディレクターが必死で巻きをいれていたのが印象的であった.客席はというと, さっちゃんの Happy Birthday と Sati's - fuction で大騒ぎしていた.大分 にも菅原祥子ファンは多い.しかし,あれだけ騒がれるとある意味気持ちいい が,初めて聞く人達に歌が聞こえないという問題もあるような気がする.

ステージが終了すると,我々はあわてて大分駅へ向かう.そう,帰りのムー ンライト九州に乗車するためである.間に特急をはさみ,なんとか間に合う. つくづく思う.ファン稼業も体力資本である,と.

13.邂逅(かいごう)

8月9日早朝,大阪は雨.雨の中下宿へ戻った私は2時間弱の仮眠を取り,阿 倍野へと出発.久々の地元イベントである.まずは阿倍野近所のゲームセンター でうちの彼女と待ち合わせる.今回の目玉である.

去る7月26日に,私が志穂ちゃんとかわした会話を思い出していた.今度は 彼女連れて来てあげてね…既に東京への長期出張から戻って来ていた彼女を連 れて行けるイベントは,大阪しかない.私は2回まわしのイベント両方の整理 券を2枚づつ手に入れていた.すなわちアルバム4枚である.売り上げには貢献 している気がするが,なにか違う気もしないでもない.さきに彼女には,私の 持っていたその重複している CD を渡してあった.最初こそ「誰がこんな奴の CD 聞いてやるもんか」的な態度を見せていたが(そりゃ当り前で,なんで彼氏 の追っかけの相手の CD なぞ聞きたがる彼女がいるもんか),私もしつこく, 「いっぺん聞いてみろって,損はせんから」と半ば押しつけたものであった.

8月9日14時,天王寺.会場はショッピングモールのど真ん中.広くもない 面積に200人近い人の群れ.そう言えばこの「いっしょがいいな」のイベント では握手会をしていたのだが,この人数でもやるのだろうか? ほどなく,今日 の前説ベルサーチ石川氏登場.プロモータらしく,志穂ちゃんのことは「私ど もの菊池志穂」と呼び捨て.流石である…なにがどう流石なのかはよくわから ないが.

トークは省略.とてもじゃないがあの馬鹿のことを書く気にはなれない. はっきり言わせてもらえば,あそこまであいの手やツッコミのぶざまな奴を私 は大阪の人間とは認めない.冗談じゃねえ.

というわけで,わずかに15分ばかりの短いトークの後,握手会.こちらは 万事滞り無く進み,私の順番になった…志穂ちゃんの開口一番,

志穂
「あーっ,彼女さんだぁ〜っ!」
(握手しながら)「どうもはじめまして」
彼女
「ぱしっ」(頭を石丸電機のレポートパッドで殴った音)
「そういうわけで,お約束通り連れてきました(^^;)」

その後私が何を喋ったかは実は覚えてないしどうでもいいのだが,気にな るのは,はじめて志穂ちゃんと対面したうちの彼女が何を話していたかである. 顔はいくつかのイベントに連れていったときに覚えていたとは思うのだが,話 をするのははじめてのはずである.

「何話してたの?」
彼女
「これからも二人なかよくしてくださいね,って」
「他には?」
彼女
「そのくらいだよ」

まずはひと安心であった.どっちがどっちへも,何を喋るかわからない. どきどきものである(笑).

14.邂逅(かいごう),そして

8月9日18時,天王寺は曇空.

本日2回目のイベント.会場も同じで,よく見ると出てる面子もほとんど変 わらなかったりもする.というわけで同じ結果になったトークは省略.一つだ け言わせてもらうとすれば,うちの彼女でさえ聞いていたアルバムを「聞いて ない人〜」「はいはいは〜い」って騒ぐお前,すげえ失礼だぞ.言葉の意味考 えてモノ言え.

というわけで,握手会に話を進めよう.さっきは私の順番だったにもかか わらず彼女に私の順番を食われてしまい悔しかったので,今度は彼女を前に立 てることにする.後ろで某氏が「こいつ(私のこと)は抑えておきますから,い いたいこと好きなだけ喋ってきていいですよ」という悪魔のささやき.再び握 手をしながらなにやら喋るうちの彼女.すごく仲良さそうに見える.女同士の 仲良さそうな会話が男の嬉しがるような話題であるはずがないというものすご い偏見を抱えている私は結局話が聞きたくて,後ろを捕まれながら虚しくもが いていることとなった.

もちろん本気で抑えつけられていたわけでも,本気でもがいていたわけで もないのだが,なんとなく…なんとなく志穂ちゃんが嫌そうな顔をしていたよ うな気がする…ごめんなさい.反省.

大阪で本当にうまいものは「うしなべ」だと豪語する私は別にうしなべ屋 の回しものではないのだが,たこやきとお好み焼きだけが大阪じゃないんやで という思いのもと,うしなべ屋を紹介し,そそくさと場を後にする.なんでそ そくさとかというと,何を喋ったかが気になったからである.その後の話から うちの彼女と志穂ちゃんのした会話を想像するとこんな感じである.

志穂
「こんにちわ〜.CDは聴いてくれました?」
彼女
「すみません,CD買ってないんです….彼がたくさんある分から 譲ってくれたので」
志穂
「そんなたくさん買わなくていいよっていってあげて下さい.譲 られちゃうと売り上げ落ちちゃうし(笑)」
彼女
「はい(笑)」
志穂
「それじゃ,いつまでも仲良くね」
彼女
「はい,あっ,これからも頑張って下さい」
志穂
「ありがとう(^^)」

どうやら恐れていたほど恐い会話は無かったようである.どんな会話に恐 れていたか,それは秘密である.

その後近所のお好み焼き屋へ.電車の都合でビールによる乾杯だけで去っ た仲間もいるが,とりあえず「いわゆる大阪の味」を堪能してくれたようでよ かった.今度はぜひうしなべを食べに行こうとこころに誓う私であった.ちな みに豚キムチとは,豚肉をキムチと合えて炒める,酒の肴によくある料理であ る.豚キムチとここまで話の関係は…わかるひとだけわかってほしい(笑).

14.一瞬の隙

8月16日,晴.午前5時49分.有明にある東京ビッグサイトに私はTWRの2番電車 で到着.入口からは西のサークル入口の方が近かったこともあり,ひとまず西 サークル入口付近へ向かった.既に西一般入場列も4桁近い人数が整列を開始し つつあり,火炎瓶騒ぎや初日の大雨もどこへやら,といった感じである.とりあえず 予想された酷暑に対応すべく,ペットボトルで買っておいたスポーツドリンク を飲みながら,開場を待つ.サークル入場は予定より2時間近く早い7時ごろと なった.さっそく私と合流した仲間は自らのスペースのある東2ホールへ足を 運んだ.

午前9時.開場前.すでに熱気は館内全域を埋め尽くしている.Pブロック 番号前半は知った顔のサークルばかりで,あまり気を使う事も緊張することも なくスペースの設営をはじめる.この日のためにいろいろと準備しておいた機材 を持ち出す.本自体はあんまり置いていなかった…まあそんなに多量に売れるこ ともなかろうという判断であった.などといっているうちに開場.

本来なら志穂ちゃんの手売りのある13時まで時間を進める所だが,そうは 問屋が卸してくれなかった.

本は私の予想を遥かにぶっとばす勢いで売れ続けた.気が付くと午前中に はすでにほぼ完売していた.そんな暇を見計らって私は,いつもお世話にな っている「帽子屋さん」こと,サークルちぇしゃ猫さんのスペースへ挨拶と 「三代目」を買いに行こうと,東5ホール付近をさ迷っていた.その時は該当 スペースが発見できず手ぶらで引き上げ,ふとスペースの向こうをみると, どこかでみたような女の人の影が…あ,志穂ちゃんだ.

店番をしてくださっていた某氏曰く,ちゃんと私のスペースをチェックして 来てくださっていたそうな.旅行中に何度か「遊びにいくね」とは言っていた ものの,この絶妙なタイミングにやってくるとは,私もとことん運のない男 である…(号泣).

話を12時30分の西4ホールに進める.コスプレの皆さんの間をぬけて企業 スペースにやってきた私は,そこに存在した「列」におどろく.ここは某 「葉っぱ」さんところの列? と思いきや,志穂ちゃんのところの列だった.ふと みるといつも見慣れた仲間たちが…列整理をしていた(^^;.ブースのほうでは ベルサーチ石川氏とかの〜ちゃん,広瀬っちとみんなそろっていた.列の整理 に当たっていたのは,おみまゆちゃん方面でも詳しいよしだ2号さんである. 私はその目立つ蛍光緑の帽子とともに,整列ついでに最後尾に並ぶ.いちおう 「さるまんが」は手中にあったので,さほど列の順序にはこだわらなくて済む.

1時,志穂ちゃんブースに出現.流れるように物販購入列が進む.混乱は ほとんどなくあっと言う間に私の順番.私は買い忘れのCDやら何やらを買い, 志穂ちゃんとご対面…開口一番

志穂
店長さん,こんにちわ〜(笑).
あああ,ブースにいなくてごめんなさい〜(汗).

しょっぱなから頭下げまくりのよわい私であった….頭下げてるついでに ふと腰のあたりをみると,ガオレンジャー(みあちゃん)のラミバッヂが…. そのときは指摘するので精いっぱいだったが,どこで手に入れたのかぜひ教えて ほしい(笑).

そして,話はいきなり15時まで飛ぶ.この日2回目の(私にとっては3度目の) 志穂ちゃんの出番である.列整理にも慣れた我々は,1回目のあとに行った ちぇしゃ猫さんのブースで例の帽子を5個ばかり購入し,やにわに目立つ格好 で整列を行っていた.特に目立つ必要はなかったのだが,びっくりさせようと いう意図は明白だった.それにしても蛍光緑の4人組は,あのコミケ会場の中 でもはたしてやたらに目立っていたのであった.

皆さんの予想通り,私は再び最後尾.かの〜ちゃんと握手をかわして購入 ブースに入り,その日買うとナマ写真のついてくるというアルバムを買って 再び志穂ちゃんとご対面.今回は山ほど頼まれたりなんなりでプレゼントやら 商品やらがあったのでそれをてきぱきと手渡しつつ,開口一番

志穂
いつもありがとう…これ何枚目?(^^;
えーっと…(^^; でも財布は大丈夫ですから(^^;;.

そのときは即答できなかったのだが,それは9枚目か10枚目である.たぶん.

そして,私の本体ともいうべき(ないしは,「本体」と言われている)蛍光緑の 帽子「三代目」を志穂ちゃんに手渡す.「イベントにかぶってこられるとびっくり するからイベントにはかぶってこなくていいですよ」と(今考えてみればおかしな 言い回しだが)言うと,「家にかざっとくね〜」とニコニコしながら受け取って くれたのが最後に印象に残った一瞬であった.

「四代目」は,その日売りの在庫最後の帽子であった.

おまけ…その後,例の「さるまんが'98夏」の値段に関して,ずいぶんいろんな ところから反響(ないしは苦情)が寄せられたらしく,タワーレコードのラジオブース の中で「あれはオトナの社会のせいです」と言って謝っていたそうな.おそらく, 企業さんの普段使う印刷業者に小部数を頼んだためにあんなえらい値段をつけざ るを得なくなったんだと思うのだが…今度は同人フレンドリな印刷屋さんを紹介 しよう,と心に誓う私であった(一部誇張).

15.夏の夜の夢

8月26日,雨.そのひとつの理由がここに あげられている….

16.そしてふたたび,夏は過ぎ…

今年の夏も終わった.夏は花火のようにまぶしく光り,輝きを飛散させ, そしてふと気づくと,鈍いくすぶりを残して消える.夏はその夕立ちのように, 派手な稲光と轟音と,叩き付けるような雨をつれて現れ,そして消える.

私のこころの夏は,だが,アスファルトが乾くようには消えない.想い出は 雨にも流されず,花火に負けない輝きを,私の胸の中で放ちつづける.



kuramoto@ics.es.osaka-u.ac.jp